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極寒のあったかすぎる食卓/「南極料理人」レビュー
2009年 09月 10日 (木) 03:48 | 編集
nankyoku.jpg


楽しみにしていた映画、「南極料理人」を観てきました。

堺雅人が主演、というだけでなく、
なんか公開前から妙にむずむずと気になっていたのです。

結果、予想をはるかに越えて満足。ほんとうにおもしろかった!!


日本から地の果て「ドームふじ基地」へ、南極観測隊としてやってきた8人の男。
さみしくなったり、いやになったり、でも、お腹はへる!!
料理人・西村(堺雅人)と、個性的で濃すぎる隊員たちが、
ペンギンもアザラシもいない南極内陸の基地で過ごす1年ちょっとの、
ドラマチックじゃないかもしれないけどやっぱり毎日ご飯は食べなくちゃ!

という日々のおはなし。


男ばっかりだし、舞台も違うし、似てるとは言えないんだけど、
「かもめ食堂」が好きだと思った人は、「南極料理人」も好きかも。
ひとつ言えるのは、この作品でフードスタイリストを務めたのは、
「かもめ食堂」のご飯を手がけた飯島さんという人です。今ひっぱりだこですよね!


犯人は誰、とか、どんでん返し、とか一切ないけど、
観る前に読んじゃったらもったいないことを今から書く。

できたら読まずに観に行ってくれ。笑

以下ネタバレ。

*


とにかくたくさん笑えるたのしい作品でした。
観客はずっと笑ってました。劇場でみんなで笑うのって一体感があって好き。


脚本は、ていねいでハッピーな伏線の扱いがとても素晴らしかった。

そして・・・・・全編をとおして、美味しそうでした!


1997年という時代設定は、原作に忠実なものだと思うけど、
今回映画化するにあたって、この12年前というタイムラグは
家電が古くてビデオデッキしかなくってKDDIがまだKDDで・・・というノスタルジーが
南極という地の果てを舞台にする上で、
現代日本との孤絶感をよりいっそう強めることに成功していると思います。


*


雪原でのサバイバルやペンギンとの遭遇も出てこない。
極地の陸の孤島での基地生活は、つまりは群像を描く密室劇だと言えます。
何気ない毎日で重要になってくるのは、みんなで共にする食事の時間。

料理人を主人公にしたこの作品は、
欲張らずに「食べること」に重きを置いたことでうまくいったのではないでしょうか。


iseebi.jpg

ひとつのポイントとして挙げられるのが、食卓での会話。
西村のおいしそうな料理を囲むシーンが繰り返し登場していながら、
隊員たちの「おいしい」「うまい」というセリフは一回も出てこないのです。
これは絶対わざとだと思います。

そのかわり、みんな好き勝手に真剣にご飯にがっつく、というのが繰り返し出てきて、
食卓のムードやみんなの食べ方は、その日の出来事などによって少しずつ違うのです。
そして、みんなが「おいしい」と思っていることは、西村だけでなく、
観ているわたしたちにも、よーく伝わってくるのでした。

ラストカットは、帰国後、家族と動物園に来ている西村が、
照り焼きバーガーにかぶりついて「うまっ!」と、声をあげる、
というものでした。
映画の中でたぶん最初で最後の「おいしい!」にあたるセリフだとおもう。


もうひとつのポイントは、「食べる」という行為とともに、涙を描いていること。

基本的には和気あいあいとやっている隊員たちだけど、
やっぱり長期間にわたる観測の疲れ、孤独、閉塞感に苦しめられることもある。

仮病で観測をさぼる者、薄笑いを浮かべてバターの塊をむさぼる者、
夜食のインスタントラーメンが底をついて情緒不安定におちいる者。

お守り(娘の乳歯)を隊員のくだらない喧嘩に巻き込まれて失ってしまったショックで
不貞寝をしてご飯を作らなかった西村。
他の隊員たちが四苦八苦して作った油っぽい唐揚げを食べながら、
自分の奥さんが作ってくれた、似たような唐揚げを思い出して、号泣するシーン。

ラーメンが食べられなくて涙を流すほど追いつめられていたタイチョー(きたろう)が、
西村が工夫して麺から作ったラーメンを夢中ですするシーン。

・・・どちらも、泣けました。笑


kitarouramen.jpg

このラーメンのシーンでは、遅れて食堂に駆け込んできた隊員たちが
「今、すっごいオーロラでてる、見たことないようなやつ、観測しなくていいの!?」と、
息せき切って気象学者のタイチョーに知らせるのだけど、
「そんなの、どうだっていいよ」「のびちゃうよ」「そうだよ、のびちゃうよ」
と皆口々に言い、結局全員で席につき、うまそうにラーメンをすするのです。

つまり南極が舞台でありながら、観客のわたしたちもオーロラを観る事ができない映画。笑

南極なのに、オーロラがラーメンにあっさり抹殺されるこのシーンからも、
「食べるってこんな場所だからこそ大切で、素敵なことなんだ」
というメッセージが伝わります。

*

sakai.jpg

大事な事を後回しにしてたが、全編を通して、料理にいそしむ堺雅人は

眼福


の一言につきる!真剣なまなざし、食材を扱う丁寧な手つきに、終始うっとり。
あと、だんだん髪が伸びてぼさぼさになるのがたまらんやった!


ラーメンの麺づくりに欠かせない「かんすい」の作り方を本さん(生瀬勝久)に聞き、
即、厨房に駆け込んで麺を打ち始めるところ。

いつもは「今日の献立」をメモしていた厨房の小さなホワイトボードに、
隊員たちが疲れ始めてきたころから、献立の代わりに
「隊員の意欲があがる料理のメニューを考える」という西村の目標が書かれ、
その言葉がずっとそのままになっていたこと。

皆を気づかう西村の優しいキャラクターは、堺雅人の柔和な物腰や笑顔だけでなく、
こんなところからも感じ取ることができました。

*

さいごに!

ポスターや予告編などでみられるコピーの一部に
「究極の単身赴任」という言葉があるように、
主人公の西村をはじめ、他の隊員たちの多くも、家族を日本に残してきている。

そして、
「究極の単身赴任」の地は、若者に「究極の遠距離恋愛」をも強いていた。

隊で最年少の大学院生・兄やん(高良健吾)には、
東京に残してきた彼女がいたのだけど・・・
たった3回しか登場しない長距離電話のシーンで、
彼女の心が徐々に離れていく様子がありありと描かれている。
「1分760円」という破壊的な通話料を使いすぎないようにするため、
電話の傍らには1分間をはかれる砂時計がおいてある。

さらさらと落ちて行く砂の描写は、若い2人が1400キロも遠く離れた相手と
1年以上心を通い合わせ続けることの困難さ、はかなさを暗示しているようでもありました。

電話で彼女にふられ、吹雪の屋外に泣きじゃくりながら飛び出し、
真っ暗な雪原に伏して「渋谷とか行きてぇ・・・」とうめく、細身でメガネの男の子。
南極ってことをのぞけば、こんな大学院生、いそうだなー。

しかし彼には思いがけない結末が待っている。たまらんかったね。KDDの清水さん!


*

あ!忘れてたけど、そしてどうでもいいけど、

「主任」は、絶対、「タンタンの冒険」に出てくる「ビーカー博士」!

cast07.jpg2752.jpg


画像がピンバッジのしか見つけられなかったけど、
作中での偏屈ぶりも含めて、ほんとに似てました。だれか分かる人いないかなー。


レビューはこんなオチになってしまったけど、ほんとにいい映画でした!
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