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インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア・ガール
2009年 09月 25日 (金) 02:54 | 編集
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Q 今やりたいことは何ですか

A 世界を変えてみたいわね

Q もっと具体的に言うと・・・

A そうね 世界を変えるキスがしたいわ


彼女はこともなげに答えた。白い煙が、ふうう、と吐き出される。

私たちは、ほこりっぽい部屋で向かい合っていた。
磨りガラスの天窓からは灰色の光が降っている。
彼女の顔は、薄暗がりに紛れてよくわからない。
かすかに見える口元から、たぶん美人なのだろうと推し量る。

私は答えの真意をつかみかねていた。いったいどういう意味なのだろう。
それがなぜ、世界を変えることになるのだろう。
だいいち彼女の場合、それでは相手が死んでしまうではないか。

「不純じゃない動機なんて、ある?すべての行動の原動力は、けっきょく自己愛でしかないのよ」

思わず、メモをとる手が止まった。やはり、彼女の語りは質問の意図から逸れている。
きゅっとタバコをはさんだ白い指が、優雅に、とんとん、と灰を落とす。

「あなたには野心があるんでしょう。こんなところまで足を運んだのが、その証拠じゃないの。」

私は押し黙ったまま、彼女の服がつくる黒っぽいドレープを見つめていた。
耳のすぐ後ろからささやかれているような心地だった。目を閉じてしまいそうになる。
レコーダーが回る音だけが、するすると静かに流れている。


翌朝、右の上まぶたが、ぷくぷくと腫れた。
彼女の毒にあたったのか、それとも。
染み出して肥大化した何かが、静かに揺れて視界をふさぐ。

あの後どうやってインタビューを切り上げ、部屋から出てきたのか思い出せない。
途切れたメモと録音が手元に残り、原稿は今も白いままだ。
録音を再生すると、ほんのりと唇の気配が首もとを撫でていくような気がして
いつもいつも、途中で止めてしまうのだった。
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