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深夜、デニーズで
2009年 11月 21日 (土) 03:48 | 編集
2年ほど前に、ある話題作を読んだときの感想を、
ちょっと趣向をこらした形で書いてみました。
(夏くらいに書いてたのを、今思い出したのです。)





この前、新しいバイトを始めました。渋谷にある、チェーン店のカフェです。
入ってすぐに歓迎会を開いてもらったのですが、そのときに、
同時にバイトに入ったもうひとりの子と仲良くなりました。
その女の子とは、面接のときにも会っていて、ちょっと気になっていたんです。
二次会のカラオケのあと、「もうちょっと話したいね」ってお互いに盛り上がったので
ギリギリで間に合いそうだった終電には乗らず、ふたりでオールすることにしました。

公園通りの坂をぶらぶら歩き、パルコの横を過ぎて、デニーズに入りました。
深夜のデニーズは、黄色っぽい優しい光に包まれて
がやがやと楽しい空気が漂っています。ここはいつまでも眠らない場所なのでしょう。
ちょっと無愛想なウェイトレスさんに案内されて、
ふたりで窓際のテーブル席に向かい合いました。
適当にふざけあいながら、ドリンクバーで飲み物を選びます。
私は暖かいダージリンティー、彼女はメロンソーダをとって、席に戻りました。

初めて会ったときから、
彼女には、なんだか不思議な雰囲気があるなあと思っていたのです。
小柄で可愛らしく、いつも微笑みをたたえていながら、どこか、うっとりと遠くを見つめているような。
尋ねてみると、やはり私と同じように上京してきたばかりで、二十歳そこそこ。
他にも出身地や趣味などを聞きあったりしていたのですが、
東京に出てくる前のことがなんとなく気になって、私は軽い気持ちで聞いてみました。


「高校時代って、どんな風だった?」


そこから、彼女は流れるように過去を語りだしました。



 彼女は、高校の同級生と運命の出会いをした。
 16歳でその恋人の子供を妊娠したものの、
 彼の元彼女に突き飛ばされて流産してしまう。

 そんな中、恋人が突然人が変わったように冷たくなり、別れを告げられてしまった。

 恋人が去った理由も分からないままつらい毎日を送っていた彼女。
 それでも、合コンで大学生と知り合い、彼の優しさに気持ちを解きほぐされ、交際がはじまる。

 新しい恋人と幸せな毎日を送っていたある日、
 彼女は、かつての恋人が突然自分のもとを去っていった理由を知る。

 かつての恋人は不治の病に侵されていたのだった。
 彼女は、彼のそばにいることを決意、優しかった恋人に別れを告げる。



彼女は、少しも言いよどむことなく、とうとうと語り続けました。
最初の恋人とのことも、次の恋人とのことも、
どんなエピソードも省かず、ひとつひとつ語って聞かせました。
途中で、何度か眠気がおそってきたけれど、なんだか遮ってはならないような不思議な気迫があり、
また、たしかにものすごく濃い内容で続きも気になったので、
私は辛抱強く聞き続けました。
途中でドリンクバーを3回お代わりし、2回トイレに立ちました。


窓の外が少しずつ明るくなってきました。


 病床の恋人は、彼女と穏やかな最後の日々を過ごし、短い生涯を閉じた。
 彼女は絶望に沈むが、彼の子供を宿していることに気づき、希望を見いだす。



やはり、彼女の恋人は亡くなってしまったのだそうです。
ここまで、6時間以上話を聞き続けたわたしは、やはりもらい泣きをしてしまいました。
これだけの劇的な体験を十代のうちに・・・。なんということなのでしょう。
涙をこぼしつつも、平凡な毎日を送ってきた私は驚くばかりです。


「じゃあ、電車も動いたし、帰ろっか」

彼女は、涙をふいて、さっぱりした表情で言いました。

早朝のスクランブル交差点は、飲み会帰りの人がぱらぱら歩いているくらいで、
昼間や夜に比べると、寂しいほどに静かでした。

渋谷駅で別れ、それぞれの電車にのって帰途につきます。
座席に腰掛けると、どっと疲れが出て、今度こそ本格的な睡魔が襲ってきました。


私は眠りに落ちていく中で、ぼんやりと考えました。


「で、その妊娠してた子どもって、どーなったんだ?」


彼女はその後すぐにバイトを辞めてしまったのですが、
しばらくして、あるケータイ小説が話題となりました。

「恋空」というタイトルで、書籍化、映画化もされて、爆発的にヒットしました。

「超感動するんだけど!」的な感想を耳にするたびに、
私はあの日の、デニーズで夜通し聞き続けた彼女の語りと、陶然とした表情を思い出すのでした。




たしか大学4年くらいのとき、映画化とかで話題になってて、
友達にURL教えてもらってノリで読んでみたのですが(PCとかじゃなく、ほんとに携帯で)

夜12時まわったくらいから読み始めて、ほんとうに朝方までかかってしまったのでした。
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