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号泣レビュー
2008年 01月 30日 (水) 23:10 | 編集
20080130225908.jpg




「ブラフマンの埋葬」小川洋子


えっと、タイトルと、裏表紙のリード文を読んで
思うところがある人は、読まない方がいいです。

小川洋子は上手い、上手いからこそダメージは大きいぜ!!

大好きな作家の一人なんですけれどもたまにとんでもないダメージを受ける。


以下、もう書かずにはいられなかったネタバレレビュー
主人公の「僕」は、様々な芸術家が創作活動のために滞在する
「創作者の家」で住み込みの管理人をしている。

ブラフマンという謎の小動物を、
「僕」が保護して一緒に暮らしだすところから物語は始まります。


ブラフマンの描写が可愛らしければ可愛らしいほど、
いやな予感はどんどん増して、ページを繰る手が焦りだす。
小川洋子の巧みな筆致が、どこまでもブラフマンを愛らしい善良な生き物として描いている
こ、これはやばい・・・


タイトルはもちろん、
墓石に字を刻む彫刻家や古代墓地、
もう全員この世にはいないであろう、どこかの家族の家族写真
畳み掛けるように登場するそういうものが、よってたかって「死」を暗示する
間違いなくバッドエンドを迎えるのだろうという予感。




ブラフマンを忌み嫌う、雑貨屋の「娘」が登場する。


小川洋子の小説に出てくる、主人公ではない「娘」は、
やや地味で、美しく質素な印象をもっている。服装の描写とかね。

この「娘」は、
母校の生物教師だった人で、今は保健所に勤めているという年上の男と関係をもっている
そして、ブラフマンを不潔だ、保健所につれていくべきだと忌み嫌う。

「娘」は、男と古代墓地でいかがわしい行為に及んでいる。いうたら不潔やん。

けれども彼女がブラフマンにしつこいほどの嫌悪感を示すのは、
つきあい始めた年上の男の職業や考え方に影響されて、
知ったかぶりをしてイキがっているだけだ
いわば、彼女をつくっているのは「偽りの潔癖」だと思う


「娘」に淡い好意を寄せる「僕」が、「娘」に車の運転の仕方を教えているとき
「僕」は、彼女の古代墓地での秘密に踏み込もうとする

動揺して運転を誤った彼女は、ブラフマンをひき殺してしまう



最悪!!どこまでも最悪なバッドエンド!
よりによってそんな殺し方ってない。

小川洋子は、例に漏れず、この「娘」にも美しく清潔な外見を与えている
けれど、内面は正反対に描いている。ぜんぜん美しくない。

ブラフマンという小さくて善いものが、偽りの潔癖の仮面をかぶった醜いものに殺される。

こんなに辛すぎる最後はない。



章ごとのおわりに、「僕」が書いたものと思われる
ブラフマンに関する覚え書き、観察日記のような物が、違うフォントで綴られている。
「ブラフマンの尻尾」「ブラフマンの食事」など。
どの文章も、「僕」がブラフマンを見つめる暖かく愛情に満ちたまなざしで。


最終章の「ブラフマンの埋葬」で締めくくられている。これがタイトルだったのさ…

「創作者の家」をとりまくごく僅かな人々に見守られた、
ささやかだけれども暖かい埋葬の様子を綴っている
碑文彫刻家の掘った墓石、ホルン奏者の葬送曲。

そして最初はアレルギーが出ると嫌がっていたレース編み作家の老婦人が、
ブラフマンを優しく包むレースのおくるみを作ってくれたところが、また泣ける。
「娘」は、もちろん一行も登場しない。


もーまじ号泣。ひどい。今日1日へこんで立ち直れなかったんですけど!!

中学生のころに飼い始めたばかりの子猫を亡くしたせいか、
犬、猫、小動物モノはもともと私の中ではある意味「反則」。
たとえば作家のエッセイとかに、長年共に暮らした犬や猫を失う記述があると、もうダメ。


小川洋子は冷静で硬質な文章を書く、だからこそベタベタの甘々にはならない。
どこか、全員を突き放したような視点で人々を淡々と描く。

だからそういう小動物モノと「ブラフマンの埋葬」とはまた別だ。
それはなぜブラフマンが死ななければならなかったか、というところにもあると思う。
考えられる最大の悲しい終わり方だ。うう。

小川さん、ドSなんやろうか。
ほんとうは、普通の家庭のお母さんで、ものすごくアツい阪神ファンなのになぁ…


次は「ミーナの行進」が読みたいな。これは大丈夫なはず…
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